クールジャパン政策の迷走、そして、それに使われる160億円もの助成金(税金)
コンテンツ業界で話題の「日本政府のクールジャパン施策」について、書いてみたいと思います(=゚ω゚)ノ
先日、↓の記事が話題になっておりました。
⇒日本のクールジャパン、政府はその為に数百万ドルのお金を費やしている 海外の反応 | World Action
上記記事内には、海外からの肯定意見もあるのですが、否定意見としてこんな感じのことが書かれています。
・今の日本は全然クールなんかじゃないよ。
・日本は既に日本が言うところの”クール”になってるんじゃない? 政府が逆に変に手を加えて台無しにしそう。
・クールに見えるように何百万ドルも費やすのは格好悪い。
・なんか必死すぎて逆に引くわ。一生懸命してる姿は見せちゃいけないよ。
要するに、
「国内だとクールジャパンって言って騒いでるけど、海外から見ると実に寒いよねー」
ってことなんですけど、確かに国内にいると、色んなメディアが盛り上げていることを見ても、「海外に日本のサブカルコンテンツがどんどん進出していっている」ような感覚を受けます。
さらには、前国会で「クールジャパン法」なんてものも可決されており、日本としてはどんどんクールジャパンで海外に攻め込んでいく姿勢を見せており、盛り上がっています。
政府公式・エヴァ風解説動画も──日本を世界に売り込む「クール・ジャパン法」とは?(ITmedia ニュース) - 国内 - livedoor ニュース
「株式会社海外需要開拓支援機構法」(クール ・ジャパン法)が前国会で成立し、6月19日に公布された。政府と民間が合同で出資する機構を設立し、海外事業への投資を積極的に進める内容で、経済産業省は「新世紀エヴァンゲリオン」風の解説動画を公開している。
このコンテンツを海外に売り込んでいく姿勢には実に賛成です。
アニメについて、世界の主流はピクサーが作るトイ・ストーリーのような3Dアニメと言われており、そうであれば日本はアニメもガラパゴス化している言えます。
海外の一部で「深夜アニメが大人気!」って言われていますが、ごく一部だそうです。
深夜アニメの海外売上が伸びていかないことがそれを物語っております。
アニメはそもそも国内でもニッチビジネスの方向に突き進んでいるので、このまま行くと、海外にまったく受け入れられない映像作りばかりしてしまうようになります。
風立ちぬがヒットを飛ばしているジブリが、アメリカでは全然受け入れられないのは、ガラパゴス性ならではでしょう。
これでは日本は人口が減少していくこともあり、縮小の一途を辿るでしょう。
かと言って、海外向けに作ったものがこれまでの深夜アニメファンを満足させられるとも考えられないので、海外、国内一般、国内深夜といったように、多軸で展開できるのが理想的ですね。
日本政府が支援金を出し、良い方向へ導くことができれば、国内で力を溜め込んだ日本のコンテンツは、世界に通用するコンテンツ化する可能性も十分にあると思います。
ただ、「良い方向へ導くことができれば」というところにかかっていると思います。
同時に出された↓の動画が話題になっていますので、ぜひご覧下さい。
エヴァ風で作られた「クールジャパン法」の説明動画です。
言っていることはとても真っ当なんですが、政府の実働部隊は、とんでもなく勘違いをしている気がします。
クール・ジャパン法 ~日本の魅力をビジネスへ~ - YouTube
参考:「まぎれもなくパワポです」――経産省が「クール・ジャパン」のために“全然クールじゃない”動画を公開した理由 - ITmedia ニュース
そして、実際にそれが体現されたのが以下の補助金・助成金施策です。
冒頭の記事では「数百万ドル(数億円)のお金」って書かれていますが、実はそんなどころじゃないんです。
まずはこれ。
経済産業省:クール・ジャパン戦略推進事業補助金
⇒平成25年度「クール・ジャパン戦略推進事業」に係る補助事業者の公募について(METI/経済産業省)
補助金交付の要件
(1) 採択予定件数 10件程度
(2) 予算規模・補助額 全採択案件合計の予算規模は約4.6億円を上限とします。なお、最終的な実施内容、 交付決定額については、経済産業省と調整した上で決定することとします。
4.6億円!
そして極めつけは、これ。
経済産業省&総務省:ジャパンコンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金(通称J-LOP)
⇒総務省|ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金の募集の開始
本助成金の総額 総額 約155億円
・ローカライズ支援 約95億円
・プロモーション支援 約60億円
155億!!!
J-LOPでは、エントリー状況が開示されているわけなんですが、これを見ると「審査ザルなんじゃないか?」って思ってしまいます。無駄遣いになってしまうようで、ますます心配です。
エントリー件数・採択件数について(2013年7月末現在)
エントリー件数 474件
採択件数 284件
辞退件数 76件(要件緩和に基づく辞退を含む)
不採択件数 4件
上記は2013年7月末までの、ローカライズ助成、プロモーション助成の単純集計 (エントリーから審査を経て採択に至るまでには、書類の状況に応じて相応の時間を要します)
しかもこのJ-LOP、不採択を4/474件まで絞っても、ローカライズ支援、プロモーション支援ともに、応募が集まりきらなかったらしく、要件緩和して引き続き募集しているみたいです。
この補助金・助成金ともに、民間企業に全て渡してしまうわけではなく、民間企業がコンテンツの海外進出に必要な費用の一部を負担するものみたいです。
事前に実際にコンテンツの海外進出プランを政府へ申請し、そこで判定を受けて、補助金・助成金が支給されます。
この多額の支援、企業には有効活用策を練って、うまく活用して欲しいです。
しかし、大事なのは、もちろんこの補助金・助成金には、私たちの税金が使われているわけです。
この2つだけでも、合計約160億円にのぼります。無駄遣いにならないことを願っています。
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